宗教法人法とその改正について

宗教法人法とその改正について

すでに宗教活動をされている方、中でも宗教法人として活動されている方はご存知かと思いますが、現在、国内の宗教法人に関する統一的な法制度としては、「宗教法人法」というものが存在します。まずは、その「宗教法人法」についてご説明いたします。

宗教法人法とは ……

まずはじめに、現在の宗教法人法が施行されるまでの経緯をご説明いたします。
そもそも宗教団体に対する国内初の統一的な制度として、昭和14年に「宗教団体法」というものが制定されました。この制度の内容を簡単に言うと、宗教団体に対する所轄庁の権限がかなり強いものだったということです。設立や法人格付与に関する許認可権(所轄庁に裁量権あり)はもちろん、その活動が規則に違反していたり、公益を害する行為を行ったとき、秩序の安定を妨げるような行為をしたときには、宗教活動の停止や禁止、さらには設立認可の取消権まで所轄庁に付与されていました。
次に、第二次世界大戦後、連合国最高司令部の要請(思想、信条、信教などの基本的人権に対する制限の撤廃)を受け、宗教団体法は廃止され、かわって昭和20年12月28日から新たに「宗教法人令」というものが施行されました。これは、全ての宗教団体に対して許認可制度を設けていた宗教団体法と比べて、宗教団体であれば自由に設立ができ、また宗教法人設立の際も、所轄庁の裁量ではなく、法律に則り、定められた要件を満たしていれば認可するという準則主義を採用するなど、宗教法人の自治を大幅に認め、所轄庁の監督権は必要最小限に止められました。
その流れを引き継ぎ、昭和26年4月3日に現在の「宗教法人法」が施行されました。これは憲法20条で記載されている「信教の自由」を根拠としており、宗教団体が礼拝の施設その他の財産を所有し、それらを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的として制定されました。この宗教法人法では、布教活動などの儀式行事を行い、信者を教化育成することを目的として礼拝施設を備える宗教団体(神社、寺院、教会、修道院など)は、宗教法人法に定める所定の事項を記載した自治規範である「規則」を作成し、所轄庁(都道府県知事※包括宗教法人は文部科学大臣)の認証を受けることにより、宗教法人となることができるとされています。そして、この宗教法人法は、先にも記載しましたように憲法に保障されている「信教の自由」という何人にも保障されている強い権利に基づいて制定されているため、その他の許認可と違い、宗教上の行為を行うことを制限するものではない旨を法律上明言(宗教法人法1条の2)しています。

このように、「宗教団体法→宗教法人令→宗教法人法」と宗教団体に対する規制が緩和されてきましたが、実際にそれらによる弊害も出てきました。これまでに宗教団体が数々の事件を起こしてきたことは皆様もご存知かと思います。そこで次の改正が行われることに なりました。

宗教法人法の改正について

宗教法人法制定後の社会意識の変化と一部の宗教団体の反社会的活動を契機として、平成7年に大きな改正が行われました。そこで主な改正点をご説明いたします。

  1. 所轄庁について
    複数の都道府県に境内建物を備える宗教法人及び当該宗教法人を包括する宗教法人の所轄庁は文部科学大臣とされました。
  2. 監督権の強化
    所轄庁は、宗教法人について認証の取消、解散命令の請求などの事由に該当する疑いがあるときには、宗教法人審議会の意見を聞いたうえで宗教法人に対し、報告を求めたり質問ができることになりました。
  3. 事務所備付書類等の義務化
    役員名簿、財産目録、収支計算書(小規模宗教法人には例外規定あり)などの作成及び事務所への備付けが義務付けられ、また、事業年度終了後にそれらの写しを所轄庁へ提出する義務も定められました。さらに、それら備付書類や帳簿について、信者その他の利害関係人による閲覧請求権も認められました。

このように監督権の強化や重要書類の提出閲覧など、これまでの規制緩和の流れとは逆に、所轄庁がきちんと管理していく方向に改正されることになりました。
実際に、この改正には賛否両論の意見があります。「十分な議論もされず、改正が早すぎる」「改正反対の意見にも耳を傾けるべきだ」という意見があり、また逆に、「所轄庁は適切に宗教法人を管理できていない」「宗教法人法が所轄庁に権限を与えていないから様々な事件が起こる」などの批判も上がっています。
とはいえ、改正がなされてしまったのは、やはり世論の宗教団体を見る目が厳しくなってきたことが原因ではないかと思われます。たしかに、社会問題を起こしたのはごく一部の宗教団体であったかもしれませんが、多くの人々に被害を与えたことは否定できません。それらを未然に防ぐためにも、国家として何等かの対応、姿勢を取らざるを得なかったのでしょう。

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2017/02/08

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