許可の要件
建設業許可の要件
当事務所ではこれまで、たくさんの事例と向き合ってまいりました。
その経験の中で、特に気を付けないといけない部分にも触れながらご説明いたします。
大きく分けて4つの要件があります。
- ①経営業務の管理責任者
- ②営業所の専任技術者
- ③財産的要件
- ④その他の要件
経営業務の管理責任者
まず、一つ目が「経営業務の管理責任者」というものです。
いわゆる「これまでにきちんと建設業についての経営経験はありますか?」という確認です。
具体的には下記の①~③の要件全てに該当する者です。
- ①過去に建設業にかかる経営経験(法人の役員、個人の事業主または支配人、その他支店長、営業所長等であって、経営業務の執行等建設業の経営業務について総合的に管理した経験)を有する者。
- ②①の期間に、許可を受けようとする建設業にかかる経験が5 年以上、または許可を受けようとする建設業以外の経験が7年以上あること。
- ③経営業務の管理責任者となる者は、常勤できる者でなければならない。
上記の事項を書面をもって証明する必要があります。
実は、ここが最もひっかかる部分です。
なぜかというと、これまでに勤務されてこられた会社での実績を証明しなければならず、その会社が建設業許可業者であれば、決算変更届(毎年提出する事業報告書のようなもの)の控えや、建設業許可業者でなければ契約書や注文書の写しを借りてくる必要があるからです。
必ずしも円満退職された方ばかりではないでしょう。
もし、お悩みのときは、是非一緒に解決策を考えていきましょう。
営業所の専任技術者
これは、許可を受ける業種毎に必ず一人、営業所に設置しなければならない技術者のことです。
下記の①~③のいずれかの要件に該当する者です。
- ①大学(高等専門学校・旧専門学校を含む)所定学科卒業後、許可を受けようとする業種について3年以上、高校(旧実業学校を含む)の場合、所定学科卒業後5年以上の※実務経験を有する者 。
- ②学歴・資格の有無を問わず、許可を受けようとする業種について10年以上の※実務経験を有する者 。
- ③許可を受けようとする業種に関して一定の資格を有する者。その他、国土交通大臣が個別の申請に基づき認めた者。
下記の①~④のいずれかの要件に該当する者です。
- ①許可を受けようとする業種に関して、国土交通大臣が定めた試験に合格した者、または国土交通大臣が定めた免許を受けた者 。
- ②上の一般建設業許可の要件の①~③のいずれかに該当し、かつ元請として4,500万円以上の工事(平成6年12月28日前については3,000万円、さらに昭和59年10月1日前については1,500万円以上の工事)について ※2年以上指導監督的な実務経験を有する者。
- ③国土交通大臣が、①、②に掲げる者と同等以上の能力を有すると認めた者 。
- ④指定建設業(土木工事、建設工事、管工事、鋼構造物工事、舗装工事、電気工事、造園工事の7業種)については、①または③に該当する者。
上記の事項を書面をもって証明する必要があります。
こちらについて注意すべき点は、技術者としての資格があるかどうかということです。
許可取得できる資格がなく、実務経験のみで許可申請したいといった場合は、前に説明しました「経営業務の管理責任者」についての証明と同じようなものを準備する必要があるからです。
実務経験時代(以前の会社)の決算変更届の控え、もしくは契約書、注文書の控えといったものを借りてくる必要があります。
ただし、資格さえ取得してしまえば回避できることですので、この辺りは経営業務の管理責任者よりは、いくらかハードルが低いといえるでしょう。
実務経験でお考えの場合、資格取得でお考えの場合も、不明な点があるときは是非、お気軽にお問合せください。
財産的要件
許可業者となるためには最低限の資本を用意しなければなりません。
このあたりも、許可を取得すると社会的信用性が向上するといわれる理由の一つです。
下記の①~③のいずれかに該当する必要があります。
- ①金融機関の預金残高証明書等の原本提出(500万円以上の残高があり、かつ申請日より1ヵ月以内のもの)
- ②法人の場合で、許可申請時直前の決算期における財務諸表において、自己資本の額が500万円以上であること。
- ③最初の決算期が未到来の新規設立法人の場合、資本金の額が500万円以上であること。(残高証明書等は不要)
下記の①~④全てに該当する必要があります。
- ①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと
- ②流動比率が75%以上あること
- ③資本金が2,000万円以上あること
- ④自己資本が4,000万円以上あること
その他の要件
当たり前のようなことですが、下記のような要件もあります。
- 許可申請書若しくは添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、又は重要な事実の記載が欠けているとき。
- 法人にあってはその法人の役員、個人にあってはその本人、その他建設業法施行令第3条に規定する使用人(支配人・支店長・営業所長等)が、次のような要件に該当しているとき。
- ①成年被後見人、被保佐人又は破産者で復権を得ないもの 。
- ②不正の手段で許可を受けたこと等により、その許可を取り消されて5年を経過しない者 。
- ③許可の取り消しを免れるために廃業の届出をしてから5年を経過しないもの。
- ④建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき、あるいは危害を及ぼすおそれ大であるとき、又は請負契約に関し不誠実な行為をしたこと等により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しないもの 。
- ⑤禁錮以上の刑に処せられその刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 。
- ⑥建設業法、建築基準法、労働基準法等の建設工事に関する法令のうち政令で定めるもの、若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、又は刑法等の一定の罪を犯し罰金刑に処せられ、刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者。
誠実性について
建設業許可を受けようとする者が法人の場合はその法人、役員、支店長、営業所長が請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが必要です。
- ①「不正な行為」―請負契約の締結又は履行の際の詐欺、脅迫等、法律に違反する行為 。
- ②「不誠実な行為」―工事内容、工期等請負契約に違反する行為 。
なお建設業法では、「不正」または「不誠実な行為」を行ったことにより免許の取り消し処分を受け、あるいは営業の停止などの処分を受けて5 年を経過しない者は誠実性のない者として扱われます。
許可取得には、これだけの複雑な要件を満たす必要があります。
だからこそ、「許可業者になる」ということは、それだけで一定の経験、能力、財力があることを社会に向けて証明することにもなるのです。
元請業者、施主、金融機関の態度ももちろん変わってくるでしょう。
2016/10/08