相続手続
相続手続
まず初めに、「相続」という言葉を聞いたことがないという方はいないと思います。また、だいたいのイメージも、「ご自身の親、または配偶者等が亡くなった際に、その亡くなられた方の財産を遺族の方々が引き継ぐこと」といった感じではないでしょうか。映画やドラマでも見たことがあるかと思いますが、それで正解です。間違いではありません。
ですが、その相続を具体的に進めていくための手続きや注意すべきことは?となると、「法律的なことで何かややこしそう」「戸籍やら集めるのが大変って聞いたけど・・・」など、ネガティブなイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。
確かに、相続の内容によってはとても手間や時間がかかるケースもございますが、実はそんなに難しくないケースもあります。
当事務所が言うのもなんですが、「わざわざ専門家を利用しなくても、ご自身でできる手続き」もあるかと思います。
ですので、ここでは「相続」という制度について、事例も交えながらできる限りわかりやすくご説明したいと思います。
相続とは?
相続とは、人が死亡したときに、その人が所有していた財産を遺族などが受け継ぐこと言 い、死亡した人を「被相続人」、受け継ぐ人を「相続人」と呼びます。
そして、その相続の対象となる財産には、現金預金はもちろん、土地や建物といった不動産など目に見える物もあれば、権利という目に見えない財産もあります。これらはいわゆる相続することでプラスになる財産ということになります。ですが、ここで注意しなければならないのが、相続の対象となる財産にはマイナス要素の物もあるということです。
例えば、死亡した人が借金を残していたり、負担すべき義務を残していた場合、それらも相続の対象になるということです。なお、このような場合の対処法としては、「相続放棄」、「限定承認」という制度があります。
このように死亡した人の財産上の権利や義務が、死亡と同時に相続人に移転することを相続と言います。「同時に」「移転する」となっていることから、相続は自動的に発動するものということになります。すなわち、財産をあげる人ともらう人の意思とはかかわりなく、被相続人が死亡した時点で、一旦相続人は財産を相続していることになるのです。
ちなみに、相続人が複数で、かつ有効な遺言書も存在しない場合、この時点では法定相続分(法律に定められている割合)に応じて相続していることになっています。
では、なぜ手続きが必要なのかというと、きちんと相続人を把握しないといけない場合や相続した財産の相続割合(法定相続分)を変更する場合、不動産の名義変更、預貯金の解約、相続放棄、限定承認をする場合など、自動的に受け継いだままでは済まされない状況が発生するからです。
相続人の確定と相続分について
それでは、次に「相続人の確定」と「相続分」についてご説明します。
なお、相続分については、さらに「法定相続分」と「指定相続分」の2種類があります。
これは、どのような手続きを行うにせよ、まずは相続人を確定し、それぞれの相続分が現時点でどうなっているのかについて把握する必要があるからです。
相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を収集する必要があります。そのうえで、収集した戸籍の記載内容を読み解き、相続人となる者を確定し ます。
また、民法では「相続人の範囲」というものが定められており、次のようになっています。
死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
の子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人 となります。これを代襲相続と呼び、代襲相続人が死亡していればさらにその子供に対して再代襲相続となります。
子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。
父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。
※第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。
その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。
第1順位同様にこれも代襲相続と呼びますが、この場合は再代襲相続はありません。あくまで一代限りの代襲相続となります。
※第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。
なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。
また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。
法定相続分とは、各相続人の取り分として民法で定められている割合のことです。
これは、先述の相続人の範囲内の順位に応じて、法律で割り振られた相続分ということで、以下のような配分になっています。
配偶者と子供が相続人である場合
配偶者 1 / 2
子供(2人以上のときは全員で) 1 / 2
配偶者と直系尊属(被相続人の父、母、祖父、祖母など)が相続人である場合
配偶者 2 / 3
直系尊属(2人以上のときは全員で) 1 / 3
配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者 3 / 4
兄弟姉妹(2人以上のときは全員で) 1 / 4
これをもとに、相続の事例を挙げてわかりやすく図でご説明いたします。
相続分には「指定相続分」というものもあります。
これは、被相続人が遺言によって各相続人の相続分を指定する方法で、法定相続分よりも優先して適用されます。ですが、その場合も遺言書の内容によっては無効となってしまう場合や、相続人の遺留分に配慮していない内容の場合は、トラブルになる可能性もあります。
自分でもできそう?な相続
次に、これまでの説明をご覧いただいたことを前提に、「ご自身でもできそうな手続きがあるのでは?」とお考えの方にご説明します。
ちなみに、相続にかかわらずどのような手続きも基本的に本人であればできるのですが、その難易度によっては専門家に依頼するという場合があります。ここでは、その難易度という意味において、ご自身でもできそうな範囲をご紹介したいと思います。
下記の事項の全てに当てはまる場合は、もしかしたらご自身で相続手続を行える可能性があります。
※相続放棄や限定承認はせずに、単純相続することを前提とします。
相続財産がそれほど高額ではない場合
相続税の基礎控除額の範囲内の相続財産であれば相続税の申告は不要です。
- 平成26年12月31日以前に相続が開始(被相続人が死亡)した場合
基礎控除額 - 平成27年1月1日以後に相続が開始(被相続人が死亡)した場合
基礎控除額
被相続人の生前の収入に関する確定申告が不要な場合
そもそも何も収入が無ければ確定申告は不要です。また、たとえ収入があったとして以下の場合は確定申告の義務はありません。
「公的年金等※の収入金額が年間400万円以下で、かつ公的年金等以外の所得金額が20万円以下の人」
※公的年金等とは、国民年金や厚生年金、共済年金、企業から給付される企業年金などを指します。
戸籍の収集が簡単な場合(相続人の確定が容易)
戸籍の収集が簡単な場合(相続人の確定が容易)例えば、上記の法定相続分の図の①もしくは②の場合などで、被相続人が生前に戸籍を頻繁に変えていない場合は、戸籍収集がそれほど大変ではありません。
相続財産が現金預金のみの場合
相続財産が現金であれば、相続人全員の総意のもとに分け前を決めればOKです。(遺産分割協議書に相続人全員の実印での押印があれば尚良いでしょう。)
また、預金であっても、収集した戸籍をもとに金融機関に解約、払戻しの申請(遺産分割協議書もしくは相続人全員の同意は必要です。)を行います。
これは、確定した相続人が多数おり、かつ遠方にいる場合は手間がかかりますが、少数でかつ身近にいらっしゃる場合は、それほど手間はかからないと思います。
いかがでしょうか?いずれにしても、手続きを簡単と捉えるかどうかは手続きをされる人それぞれですので、「必ずできます!」とは断言できませんが、実際にご自身で手続きをされた方もいらっしゃいます。
なお、相続財産が現金預金以外の場合ですと、それらを金銭に評価する作業が必要になります。さらに不動産がある場合は名義変更が必要になるでしょうし、その他の権利義務を承継する場合なども手続きは煩雑になってきます。ですので、そういったケースの場合は、専門家に委ねることも一つの選択肢かと思います。
2017/06/17