民泊ビジネスの現状について
民泊ビジネスの現状について
民泊の定義は?と聞かれると、「民家に宿泊すること」という曖昧な表現になってしまうのが現状です。
例えば、友達が泊まりにくるのも民泊、泊めてもらうのも民泊です。
ただし、ここで注意していただきたいのが、最近話題になっている民泊ビジネスです。
これらの多くは、Airbnbなどの仲介サイトを使って宿泊希望のお客様を募集していますが、これは「不特定多数の者に反復継続してサービスを提供する」という旅館業法の定義に抵触します。
であるならば、もちろん旅館業許可(民泊は簡易宿所営業に該当)を取得する必要が出てくるのですが、多くの方が無許可状態というのが現状です。勿論、これにはきちんと理由もあります。
【理由①】
日本で空き家問題が深刻化するなかで、訪日外国人が増加し宿泊先が不足しています。その状態から生まれた新たなビジネスモデルが民泊です。空き家を新たな収益物件として利用できると知り、大勢の方が民泊ビジネスに参入していますが、その多くはこれまで旅館やホテルを経営されたことがなく、許可の存在を知らないまま民泊をスタートしています。
【理由②】
現在の旅館業法は、そもそも民泊という新たなビジネスモデルを想定していない時代に作られた法律であるため、許可を取りたくても物理的に不可能な場合がある。
☑そもそも旅館業をやってはいけない地域だった。
☑アパートやマンションの一室を使っているけど、帳場(フロント)の設置は不可能。
☑古い木造戸建てを一棟貸ししているけど、防火対策にこんなに費用がかかるとは・・・。(建築基準法・消防法上の要件)
このような理由から無許可が増えたのではないかと思います。
現在では民泊に関連する事件やニュースも多く、きちんと許可を取得しようとする方も増えていますが、今のままでは許可取得のハードルが高すぎます。
そこで現在、国は急ピッチで旅館業法の改正と民泊新法(民泊に特化した法律)の制定をしています。改正法の施行はまだ先ですが、少なくとも現在の要件を緩和する方向にはなるはずです。
ちなみに、床面積の要件(簡易宿所営業のみ)はすでに改正されており、これまでは宿泊者数にかかわらず33㎡以上確保する必要があったのが、「宿泊者数が10人未満の場合は宿泊者数×3.3㎡」でOKになりました。
しかし、簡易宿所営業の帳場(フロント)設置の要件緩和については旅館業法の改正では期待できないかもしれません。
と言うのも、そもそも現在の旅館業法の中には、簡易宿所営業の要件として帳場(フロント)の設置についてはどこにも記載されていません。ですので、簡易宿所営業であれば原則帳場不要なのです。
では、なぜ要件とされているのかというと、平成12年12月15日の厚生労働省の「旅館業における衛生等管理要領」という通知に記載があるからです。その通知の中で「帳場(フロント)を設けること」とされていたため、その通知を受けた各自治体が条例にその旨を定めたということです。
その後、民泊の増加に伴い、平成28年4月1日にこの要領も改正されました。
「帳場(フロント)を設けること」→「帳場(フロント)を設けることが望ましい」
このように「望ましい」という努力義務になりました。もし、これが法律の改正であれば自治体の条例も帳場設置を努力義務に改正するでしょう。ですが、これはあくまで厚生労働省の「要領」という通知ですので、条例を改正するかどうかは各自治体の判断です。
そのため、現在も多くの自治体が簡易宿所営業でも原則帳場の設置を要件としています。
では、民泊新法はどうなのでしょうか。
平成30年1月までに施行される予定ですので、現時点ではあくまで案なので確定ではありませんが、一部抜粋してみます。
☑申請の種類・・・届出
☑宿泊日数の条件・・・なし
☑帳場(フロント)の設置・・・不要
☑営業日数の上限・・・年間180日まで
まず、申請が届出となっていることから、許可制である旅館業法よりもはるかに負担が軽くなります。
許可というのは、「行政が一律に禁止している行為を、行政が認めた者にだけ許すこと」を言いますが、届出は、「何かしらの行為をするならば届け出てください」というものですので、かなりニュアンスが違います。
次に、帳場(フロント)の設置義務についてですが、「なし」となっています。これは民泊物件にとっては大きなメリットといえるでしょう。帳場設置要件を満たせないがために、旅館業許可を取得できなかった方にとっては朗報です。
さて、帳場設置要件はクリアできたけど最後の項目が気になります。民泊関係者であればすでにご存知かもしれませんが、営業日数に上限が設定されています。
「年間180日まで」
しかも、この180日を条例でさらに縮小することを検討している自治体もあります。
この規制をみて、私は問題ないですと思われる方は構わないのですが、多くの民泊関係者は「これでは採算が合わない」と思われるのではないでしょうか。
実際に、この民泊新法に期待を寄せていた民泊関係者からは落胆と批判の声が上がっています。
結局のところ、180日を超えて営業する場合は旅館業法の許可を取得しなければならないため、この営業日数の上限規制は民泊新法の有用性に大きな影響を与えることと思います。
ただ、全ての民泊に有用性がないかと言えば、そうではない気もします。
この民泊新法には「家主不在型」と「家主居住型」の2つのタイプがあり、この「家主居住型」のタイプであればメリットがあるかもしれません。
例えば、家主自身が住んでる自宅を宿泊者に利用させる場合です。自宅が賃貸でも自己所有でも、そもそも自分で住んでる以上必要経費は発生しますので、そのうえで180日の範囲内で民泊営業を行えば、その分の収益は得られます。
いずれにせよ、国が考える民泊ビジネスの無許可状態の解消施策も、この営業日数の上限規制が足枷となるのではないかと危惧します。
もし、物件はこれから探すという方は、
☑すでに許可を取っている物件を譲ってもらう
めったにお目にかかる物件ではないと思いますが、もしあれば最高です。
(ただし、譲る理由もきちんと確認してくださいね)
☑戸建ての空き家
賃貸の場合は民泊使用についてのオーナーの承諾は必須。
(これでトラブルになるケースもあります)
最近では、不動産屋に「民泊OK」という物件もあります。
(ただし、民泊OK=許可取得できる物件とは限りませんので注意してください)
これらの方向でご検討されてはいかかがでしょうか。
上記以外にも、物件がある場所の用途地域の制限などもありますので、民泊ビジネスをお考えの際には、まず構想段階で専門家にご相談されることをお勧めいたします。
2017/07/04